微生物はほんとうにたくさん種類がありますが、発酵で使用する微生物は限られています。
ここでは、発酵に使用される主な微生物の種類について解説します。
早速ですが、主な微生物は以下の4つになります。
- 細菌
- 酵母
- カビ
- 放線菌
微生物は属、種で分類されており、有名なものは大腸菌や酵母などではないでしょうか?
ちなみに属種での分類は以下のようになります。
読めないですよね、、。日本語の読みはこんな感じです。
大腸菌:Escherichia coli(エシェリキア コーリ)
酵母:Saccharomyces cerevisiae(サッカロマイセス セレビシエ)
ここでは、学術的ではなく商業規模の培養時の微生物の特徴について解説しますね。
それでは、4つの微生物について解説します!
細菌(さいきん)
細菌、バクテリアともいわれます。
有名なものでは大腸菌、枯草菌、乳酸菌などがあります。
枯草菌はBacillus属に分類され、納豆づくりに使用されていますよ。
乳酸菌はヨーグルトに使われていますし、最近は乳酸菌飲料にも多く使われいます。
細菌はその名の通り、細かい菌で形によって球状のものは球菌、棒状のものは桿菌と言われます。
培養の視点だと以下の特徴があります。
- 生育が速く、培養時間は短めの傾向(1日~5日程度)
- 生育pH域は中性付近
生育が速いため、培養異常が発生すると数時間で培養がアウトになってしまう場合があります。
例えば、急激にpHが下がって菌が全滅してしまうなど、、、
そのため、培養のスケールアップは難しい傾向があります。
あと、培養後に菌体分離が難しいという特徴もあります。
酵母(こうぼ)
パンやお酒をつくるときに使用される微生物です。
イースト菌ともいわれ、4種類の中では一番聞きなじみがあるのではないでしょうか?
酵母の大きさとしては、細菌よりも大きく球状の特徴があります。
培養の視点だと以下の特徴があります。
- 生育はそこまで速くなく、培養時間は2日~6日程度
- 生育pH域は中性付近
培養自体はそんなに難しくない印象です。
酵母はパン酵母やビール酵母として、商業規模での知見が多い微生物ですのでスケールアップが確立されている微生物になります。
カビ
いわゆるカビです。お風呂場によく生育する困ったやつです。
ただ、このカビは日本人には非常になじみのある微生物なんですよ。
麹(こうじ)って言葉はみなさんご存じですよね? 実はこれはカビを培養したものです。
実際に私たちに身近なものとして、日本酒、焼酎、味噌、醤油などに使われています!
麹菌といわれて最も有名なものが、Aspergillus oryzae(アスペルギルス オリゼー)です。
実はこのアスペルギルス オリゼーは国の菌、「国菌」と指定されているんですよ。
カビは糸状菌とも言われ、培養中に菌体が糸状に伸びていく特徴があります。
この糸状の菌体が凝集してペレットという球体を形成することもあります。
培養の視点だと以下の特徴があります。
- 生育は遅く、培養時間は3日~10日程度
- 生育pH域は酸性~中性付近
- 培養中に菌体がペレット状やフィラメント状になる。
- 生育し過ぎると培養液がドロドロになってDO不足になる。
カビは培養し過ぎて菌体が増え過ぎなければ、比較的コントロールしやすい品目になります。
ちなみに菌体自体がろ過材となるので、菌体分離は非常にラクです。
放線菌(ほうせんきん)
放線菌は細菌の一種ですが、カビに似た挙動をする微生物です。
抗生物質(こうせいぶっしつ)ってみなさんご存知ですよね。
風邪をひいたときに処方されるお薬です。
じつは、放線菌の中でStreptomyces属に属する微生物はストレプトマイシンなどのいろいろな抗生物質を産生します。
本当にありがたいですよね!
放線菌もカビのように培養中に菌体が糸状に伸びていく特徴があります。
培養の視点だと以下の特徴があります。
- 生育はそこまで遅くなく、培養時間は3日~7日程度
- 生育pH域は中性付近
- 培養中に菌体がペレット状やフィラメント状になる。
- 生育し過ぎると培養液がドロドロになってDO不足になる。
放線菌もカビと同様に培養自体は比較的コントロールしやすい品目になります。
抗生物質をつくりやすい微生物ですので、抗生物質をつくる目的ではいいのですが、それ以外の目的で使用する場合は、抗生物質の残留が意外と問題になる場合があります。
まとめ
今回は細菌、酵母、カビ、放線菌の4種類の微生物を紹介させていただきました。
培養の視点だと、細菌 > カビ ・ 放線菌 > 酵母 の順にスケールアップは難しい傾向だと思います。
私の経験では、商業規模で使われている微生物は細菌とカビが多いのかなという印象です。
微生物の種類ごとの特徴をおさえつつ、それぞれの微生物の属種に合う培地・培養条件を見つけて、スケールアップすることは一筋縄ではいきません。
ただ、そこを乗り越えることが技術者の役割かなとも思います。
ぜひご参考下さい。
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