微生物を培養させるための培地は本当にたくさんの種類があります。
おそらく皆さんはこれまでに使用していた培地を軸に培地の選択や実験をされているのではないでしょうか?私も初めは同じように培地を選んでいました。
でも、どういった種類のものを選べばいいかってよくよく考えると難しいですよね?
そこで、今回は微生物の培養で使用する培地について、4つに分類に分けて説明します。
いきなり結論になりますが、分類は以下の通りです!
- 炭素源(C源)
- 窒素源(N源)
- 塩類(ミネラルなど)
- 消泡剤
それぞれの分類について説明していきますね!
炭素源(C源)
炭素源はC源とも言われ、微生物のエネルギー源になります。食事でいうところの炭水化物(ごはん)をイメージされるといいかなと思います。
炭素源の種類は以下の通りです。
- スターチ系:ばれいしょでんぷん、コーンスターチなど
- デキストリン系:酸分解デキストリン、酵素分解デキストリンなど
- 糖類系:グルコース、マルトース、スクロースなど
- その他:ソルビトール、グリセリンなど
使用される濃度の目安は1~10%程度。単価は低めなものが多いです。
グルコースなどの還元末端をもつ炭素源は、殺菌時にメイラード反応による着色物質ができて培養に悪影響を与える可能性があるので注意が必要です。
窒素源(N源)
窒素源はN源とも言われ、微生物の身体をつくる原料になります。食事でいうところのタンパク質(肉・魚)のイメージです。
窒素源の種類は以下の通りです。
- 天然系:大豆由来タンパク質、小麦由来タンパク質、ミルクカゼインなど
- 単一系:グルタミン酸Na、グリシンなど
- 酵母エキス系:ビール酵母、パン酵母など
- その他:アンモニア、アンモニウム塩など
使用される濃度の目安は0.1~3%程度。単価は高めなものが多いです。
酵母エキスはミネラル分も多く含まれており、培地原料としては非常に優秀です。とりあえず酵母エキスさえ入れておけば大丈夫といった原料です。ただ、単価が高めになるので使用量が多いとコストアップとなるので注意が必要です!
塩類
塩類はリン酸カリウムや硫酸マグネシウムなどの化学合成品です。微生物に必要なミネラルの補給や、培養液のpHを維持するためのバッファー剤として使用されます。
塩類の種類はかなり多いので代表的なものについてのみ記載しますね。
- リン酸塩:カリウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩など
- 炭酸塩 :ナトリウム塩、カルシウム塩など
- 硫酸塩 :アンモニウム塩、マグネシウム塩、鉄、亜鉛など
使用される濃度の目安は0.01~1%程度。単価はものによって異なるという感じです。
pH調整目的として使用する場合は、バッファー効果をもつようにリン酸1カリウム+リン酸2カリウムなど組み合わせによって目的pHになるように使用します。
消泡剤
消泡剤は培地殺菌時や培養中の発泡を抑えるために使用される原料です。
上記の3つとは異なり、消泡剤は微生物培養特有の原料になります。消泡剤によって発泡によるコンタミネーションのリスクを低減し、物ロスの低下を防止します。
消泡剤の種類は以下の通りです。こちらもたくさんあるので代表的なもののみ記載します。
- シリコーン系:シリコーン樹脂など
- アルコール系:ポリオキシアルキレングリコールなど
- 油脂系 :大豆油、サラダ油など
使用される濃度は0.001~1%程度。単価はものによります。油脂系は安価ですがたくさん添加する必要があり、逆にアルコール系は高価ですが非常に低濃度でも効果があります。
培養工程での発泡をいかに抑えるかは培養技術者にとっては大きな課題の一つといえると思います。発泡しにくい原料を選ぶのも重要なポイントになりますよ。
まとめ
今回は培地の選び方と4つの分類について解説させていただきました。
復習となりますが、各原料の使用濃度の目安は以下のようになります。
炭素源 | 窒素源 | 塩類 | 消泡剤 | |
使用濃度 | 1~10% | 0.1~3% | 0.01~1% | 0.001~1% |
もちろん、微生物の特性によって濃度が異なる場合もあります。また、今回紹介させていただいた以外に微量元素やビタミンなどが必要な場合もありますのでその点はご留意下さい。
天然培地の場合には、明確に炭素源、窒素源と区別できないものもありますが、そこはあまり気にせずに含量の多い方にしておけばいいと思います。
最後に、CN比について説明しておきます。炭素源:窒素源の比をCN比(CNバランス)といいます。微生物によってはこのCN比が崩れると培養に大きな影響を与える場合があります。濃度UPする場合はCN比を保ちながら行うなど、培地検討の一つの指標になります。
ぜひご参考下さい。
コメント