微生物発酵については、フラスコやミニジャーを使用した培養実験を行うことが多いと思います。
今回は実験計画を立てる上で意外と忘れがちな3つのポイントについて解説させていただきます。
早速ですが、3つのポイントは以下の通りです!
- Controlを必ず入れる!
- 変えるパラメータは1つ!
- 再現性を確認する!
それでは解説をさせていただきますね!
Controlを必ず入れる!
Controlはいわゆる「対象」のことです。実験計画での比較対象となる条件のことです。
例えば、今ベースとして使用している培養条件があれば、その条件がControlとなります。この条件と比較して生産量が上がったかどうかを実験で検証します。
実験を進めていく中でデータをできる限りたくさん取得したいと思うのは当然ですが、Controlを入れると1条件を減ってしまうため、実際は省略されている方もいるのではないでしょうか?
ただ、Controlを抜いてしまうと以下のデメリットが発生します!
- Control値と比較ができないため、得られた実験データが妥当性がわからなくなる。
- Control値のフレ幅が大きかった場合、得られたデータの信ぴょう性が低くなる。
Controlの条件が無いと得られたデータの分析ができず、実験がムダになってしまう可能性があります。Controlの再現性が間違いなくとれる、データのフレ幅がほとんどない場合を除いてControlを必ず入れることをおすすめします!
1点目、「Controlを必ず入れる!」忘れないで下さい。
変えるパラメータは一つ!
実験計画を立案する上で、条件のパラメータを一度に2つ以上変更していませんか?
一度にたくさんの条件を試したいと思う気持ちがわかりますが、一度に2条件を変更するとデータの「整合性」が取れずにムダが発生してしまう場合が多いです。
Controlの条件に対して、1条件を変える実験計画を組むことで整合性のとれたデータの取得ができるようになります。
実際にジャー実験を例にして説明しますね。
①ダメな例:Controlに対して2条件とも変更している!
項目 | No.1(Control) | No.2 | No.3 |
温度(℃) | 30 | 35 | 35 |
回転数(rpm) | 500 | 600 | 700 |
→No.2の条件の結果が最も良かった場合、温度、回転数、温度+回転数のどれが生産性向上に効いているかがわからない。
②良い例:Controlの温度条件は揃えている(1条件のみ変更)!
項目 | No.1(Control) | No.2 | No.3 |
温度(℃) | 30 | 30 | 30 |
回転数(rpm) | 500 | 600 | 700 |
→No.2の条件の結果が最も良かった場合、回転数が生産性向上に効いているとわかる。
特にジャー実験など実験できる数が限られている場合にやってしまっている場合が多いと思います。私も以前はやってしまっていました。ただ、「確実に実験データを取得していく」という考えから、今は1条件のみを変えることを鉄則にしています。
2点目、「変えるパラメータは1つ!」ご参考下さい。
再現性を確認する!
同じ実験条件で何度か実験を行って、得られたデータに大きなフレ無いかどうか、同様の値が出るかどうか「再現性」を確認します。
ちなみに私の場合のデータのバラつき許容の目安はCV値(変動係数)で10%以内です。特にControl条件の値のバラつきに注意します。
技術者としてやりがちなのは、たまたま出た良いデータを再現性をとらずに報告してしまうことです。いわゆるチャンピオンデータを出してしまうことです!
ただ、再現性を確認しないと以下のデメリットが発生します!
- 得られたデータの妥当性がわからない!
- チャンピオンデータが一人歩きして、結局後でしっぺ返しがくる!
本当に良い数値は恐ろしいほど一人歩きします。ラボでしか確認できていない数値なのに原価計算にも使われて、あたかも「現場で出ます!」みたいな恐ろしいことになる場合が結構あります。
そのため、私は必ず再現性を取ります。だた、再現性を取る余裕が無く、報告が必要な場合は少しバッファーを入れて報告するようにします。
それは微生物を扱う以上、以下の点を押さえているからです。
- 培養実験ではそもそもフレが出るということを知っている!
- ラボよりもスケール上げていくと生産量が減っていくことを把握している!
チャンピオンデータを報告したばっかりに、あとあと上司や周囲から攻められて病んでしまう、離職してしまうといったケースに遭遇したことも実際にありました。
再現性を確認すれば、こういったリスクを低減できると思います。
3点目、「再現性を確認する!」必ず確認するようにして下さい!
まとめ
今回は以下の実験計画に関する3つのポイントについて解説させていただきました。
- Controlを必ず入れる
- 変えるパラメータは1つ
- 再現性を確認する
「こんなこと当たり前だろっ」と思われる方もいらっしゃるとは思います。ただ、経験を積めば積むほどなおざりになっていく点でもあるかなと思います。
上記のポイントを押さえて実験を行えば、固い実験ができますし、結果として実験のやり直しのムダを減らすことができます。
是非ご参考下さい。
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