微生物発酵のスケールアップをする上でミニジャーは欠かせないツールです。以前、培養実験といえば、フラスコがメインでしたが、最近はミニジャーの価値が上がってきているように感じます。
今回は、ミニジャーの選び方と主要なメーカーについて紹介させていただきます。
ちなみにスケールアップはおおよそ以下のフローで行います。フラスコ~生産槽までの培養方法と殺菌方法の違いをまとめましたのでこちらもご参考下さい。
<スケールアップフロー> フラスコ → ミニジャー → パイロットプラント → 生産槽
項目 | フラスコ | ミニジャー | パイロットプラント | 生産槽 |
培養方法 | 振とう培養 | 通気撹拌培養 | 通気撹拌培養 | 通気撹拌培養 |
殺菌方法 | オートクレーブ殺菌 | オートクレーブ殺菌 | 蒸気吹込み殺菌 | 蒸気吹込み殺菌 |
それでは、早速ミニジャーの選び方と主要なメーカーについて説明しますね!
ミニジャーの選び方
ミニジャーを選ぶ上のポイントは以下の3つあります。
- ミニジャー本体(天板部、ベッセル部)のハンドリング性(操作性、洗浄のしやすさ)
- ミニジャーを制御する機器類の操作性(培養条件設定、センサ校正)
- 培養データの収集と加工のしやすさ(データ収集ソフト・編集ソフト)
たくさんのメーカーからいろいろなジャーが販売されていますが、構造的にはほぼ同じです。そのため、上記の点を念頭に「実物をさわって操作性を確認すること」がベターです。
追加の確認ポイントは以下の通りです。
- ミニジャー本体の重量:ステンレス製だとかなり重くなるので女性は扱いが難しくなります。加圧タイプを選ぶと重量が重くなるので注意が必要!
- センサ校正作業:pH・DOセンサの校正作業は使用ごとに発生、実際に校正液につけて校正作業がやりやすいか確認します!
- 安全面への配慮:撹拌回転数は1,000rpm程度まで上げられますので保護カバーの有無の確認。また、ヒーター部分も火傷の危険性があるので取り付け方法も含めて注意が必要!
- 培養データの加工のしやすさ:培養データはだいたいCSVファイルでの取り出しとなります。その後のデータ加工のしやすさについても確認しておくことが重要です。
この中で一番盲点なので、「4.培養データの加工のしやすさ」です。みなさん、取得したCSVファイルをエクセルで加工しているのではないでしょうか?データ量が多いためグラフにするとかなり重くなるので私も苦労していました。この点については、まとめのところで対策を説明しますね!
次に主要メーカーについて説明します!
ミニジャーの主要メーカー
今回紹介するのは、以下の国内の3つのメーカーです。ラボ~パイロットプラントまでの培養装置を主として製造・販売しているメーカーになり、国内の発酵業界では有名どころだと個人的には思います。
簡単にはなりますが、各メーカーの概要は以下の通りです。
1.エイブル株式会社
ミニジャーについてはBMSシリーズがメイン。企業だけでなく、大学などの研究機関にも広く導入されており、ミニジャーの知名度は一番!データ収集ソフトにも強みがあります。
2.株式会社 丸菱バイオエンジ
老舗の培養装置メーカーで、30L槽以上の培養槽を得意としているのが私の印象です。最近はMicro Twinという0.5L~2Lジャーのシリーズの販売に力を入れているみたいです。
3.株式会社 三ツワフロンテック
培養部は山口県にあり、同じ県にある協和発酵バイオの系統を受け継ぐ由緒あるメーカーというのが私の認識。軸封部が無いマグネットドライブの撹拌に強み!
まとめ
ミニジャーの選び方については、みなさんの使用目的に応じて選定する必要はあります。今回紹介したのは一般的な微生物発酵に使用するジャーとなりますので、特殊なミニジャーが必要な場合は個別にメーカーに相談する必要があります。
ただ、今回紹介させていただいた3社に相談すれば、なんらかの答えをもらえるのではないかと思います。悩まれている場合は、まずメーカーに相談するのが得策です!
ちなみに私はエイブル製の5Lジャーをメインで使用しています。計算してみたところ、これまでで累計2,000回以上は仕込んできました。月日が経つのは早いですね(笑)
エイブルびいきというわけではないのですが、使い勝手は非常に良いです。特にデータ収集ソフト(Graph2)は秀逸で、データ収集→加工→報告書作成までの一連の流れが非常にラクになるので、超おすすめです!
ご参考下さい。
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